大江健三郎の「厳粛な綱渡り」という20代のエッセイ集に 彼とジャズとのかかわりが書かれたエッセイが載っています。 その中で パリに滞在中 バドパウエルを聴きに行って「老いたセイウチ…」と表現しています。
【バド・パウエルがピアノの前に座ったとき それはまさに老いたるセイウチだった。バドパウエルが数曲演奏するあいだに クラブじゅうのだれもが 最初の緊張感をうしない。退屈し弛緩してしまったようだ。ぼくもまた 冷淡な気分になって バドパウエルを聴いていた。ところが 最後の一曲で バドパウエルはまったく非連続的に 唐突に 蘇ったのである。かれは すでにバドパウエル伝説となったもおぼしい。凄まじいばかりのスピードと明快さで ピアノから音楽をほとばしらせた。ああ、これがバド・パウエルだとぼくは納得し…】とあります。
BGM : "How High The Moon" / Bud Powell
0 件のコメント:
コメントを投稿